工場から出る排ガスとは?種類・処理の重要性・法的規制をわかりやすく解説

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工場から出る排ガスとは?種類・処理の重要性・法的規制をわかりやすく解説

工場を借りて製造や加工を行おうと考えている方の中には、

排ガス(はいガス)」についてあまり意識したことがない方も多いのではないでしょうか。

機械を動かしたり、塗装・加熱・溶接などを行う過程で、
工場からは目に見えにくいさまざまなガスが排出されます。
その中には、人体や環境に悪影響を与える物質も含まれており、
法律によって排出量や処理方法が厳しく定められています。

もし、これらの規制を知らないまま工場を借りて操業を始めてしまうと──
近隣住民からの苦情や行政からの指導
操業停止命令や罰則
想定外の改修コストの発生
といったトラブルに発展する可能性があります。

実際、工場物件を検討される方の中には、
「排ガス設備がどんなものなのか」「どんな業種にどんなガスが出るのか」まで
把握されていないケースが少なくありません。

この記事では、

工場で排出される排ガスの種類

処理の重要性と法的規制

主な処理方法

物件選びの注意点
について、実務の視点からわかりやすく解説します。

「どの工場でも同じではない」──
そんな排ガスの違いを理解することで、
安心して操業できる工場選びにつながります。

.工場から出る「排ガス」とは?

排ガスの基本的な考え方

排ガス」とは、工場や発電所などの燃焼設備・生産工程から大気中へ排出されるガスのことです。
この中には、目に見えない化学物質や微粒子が含まれており、
放出量や濃度が一定基準を超えると人体や環境に悪影響を及ぼします。

排ガスは、単なる煙ではなく化学反応の副産物
燃焼・乾燥・塗装・溶接・加熱など、
ほとんどの工場作業で何らかのガスが発生しています。


大気汚染防止法による分類

排ガスに関する代表的な法律が「大気汚染防止法」です。
この法律では、排ガス中に含まれる有害物質を次のように分類しています。

区分

概要 

 主な発生源

ばい煙(はいえん)

燃料を燃やす際に出る煤やガス

 ボイラー・焼却炉・溶接・乾燥炉など

揮発性有機化合物(VOC

有機溶剤の蒸発で出るガス

 塗装・印刷・樹脂成型・洗浄工程など

粉じん

研磨・破砕などで空中に舞う微細な粉

 土砂運搬・建材加工・粉体製造など

これらの中でも特に人体や環境への影響が大きいとされるものが、
硫黄酸化物(SOx窒素酸化物(NOx といった「ばい煙」類です。
これらは大気中で化学反応を起こし、酸性雨や光化学スモッグの原因にもなります。


有害大気汚染物質とは

大気汚染防止法では、健康被害の恐れがある物質を「有害大気汚染物質」として定義しています。
その数はなんと248種類。
中でも特にリスクが高いとされる23物質(優先取組物質)には、
次のような化学物質が含まれています。

・ベンゼン

・トリクロロエチレン

・テトラクロロエチレン

・ダイオキシン類

・アクリロニトリル など

これらは少量でも健康被害を及ぼすおそれがあるため、
発生源となる工程をもつ工場では、排出抑制や処理設備の設置が義務化されています。


「粉じん」と「特定粉じん」

粉じんは、固体や粉体を扱う際に空気中に舞い上がる粒子のこと。
土砂を扱う堆積場や、粉砕・切削・研磨などの工程で発生します。

粉じんの中には特に人体に影響を与えるものがあり、
それを**特定粉じん(アスベストなど)**と呼びます。
これらは吸い込むことで肺疾患などの原因となるため、
作業現場ではマスクや集塵機の使用が義務付けられています。


排ガスは業種によって内容が違う

排ガスの内容は、業種によって大きく異なります。

業種

 主な発生ガス

 特徴

金属加工

 ばい煙・粉じん・酸化物

 加熱・溶接で発生しやすい

化学製造

 VOC・有害物質

 揮発・反応工程で発生

食品製造

 油煙・水蒸気・におい

 加熱・乾燥工程が中心

塗装業

 VOC・ばい煙

 有機溶剤を多用するため対策が重要

工場を借りる際には、**「自社の業種でどんなガスが出るのか」**を事前に整理しておくことが大切です。
これを知らずに契約してしまうと、排気設備の追加工事や使用制限が発生する場合もあります。


🧩 小まとめ

排ガスとは、単なる煙ではなく「事業活動の副産物」
種類によって規制法も処理方法も異なります。

工場選びで重要なのは、
「自社の業種でどんなガスが出るか」「それに対応できる設備があるか」
を把握すること。

次章では、なぜこの排ガス処理がそれほど重要なのか──
法的な位置づけと、放置したときのリスクを解説します。

. 排ガス処理の重要性と法的規制

排ガスは環境問題だけではない

排ガスの管理というと、「環境に優しい企業活動」というイメージを持つ方も多いでしょう。
しかし実際には、これは企業の信頼や操業を左右する法的義務でもあります。

工場から排出されるガスには、
人の呼吸器や皮膚に悪影響を与える物質、
金属を腐食させたり、地域の植物に被害を及ぼすものも含まれます。

そのため、排ガス処理の目的は単にきれいな空気を守るだけでなく、

・従業員の健康を守る

・生産環境を維持する

・近隣住民とのトラブルを防ぐ

・企業としての社会的信用を保つ
といった多面的な意味を持っています。


法律で定められている主な規制

排ガスに関する代表的な法律は、
**
大気汚染防止法悪臭防止法**2つです。

法律名

 規制対象

 主な目的

大気汚染防止法

 ばい煙、VOC、粉じん、有害大気汚染物質

 国民の健康保護・生活環境の保全

悪臭防止法

 におい物質(アンモニア・硫化水素など)

 生活環境への影響防止・苦情対策

特に「大気汚染防止法」では、排ガス中の**硫黄酸化物(SOx)・窒素酸化物(NOx**などに
都道府県ごとの規制値が定められています。

違反した場合、都道府県知事による改善命令・操業停止命令などの行政処分を受けることもあり、
悪質なケースでは罰則(懲役・罰金)が科されることもあります。


近隣住民とのトラブルも深刻化

近年は環境意識の高まりもあり、
「におい」「煙」「粉じん」に対して住民から苦情が入るケースが増えています。

例:

・「風向きによって工場のにおいが住宅地に流れてくる」

・「洗濯物がすすで汚れる」

・「夜間に換気扇を回すと異臭がする」

こうした苦情が行政に寄せられると、現地調査立入検査指導勧告という流れになります。
一度改善命令を受けると、その後の操業に影響が出るほか、
「環境対策が不十分な企業」として取引先からの信用低下につながることもあります。


労働環境・設備への影響

排ガスを適切に処理しないと、
工場内にも悪影響が及びます。

・室内にガスがこもり、作業員の健康を害する

・腐食性ガスにより機械や配管が劣化

・排気ファンやダクトの目詰まりで生産効率が低下

これらは長期的に見ると、設備メンテナンス費や生産性の低下につながります。
そのため、多くの企業では法定基準を上回る自主規制値を設定し、
モニタリング機器を導入して24時間体制で排ガスを監視しています。


規制を無視した場合のリスク

排ガス対策を軽く見ていた」「設備更新にコストをかけなかった──
そうした小さな判断ミスが、大きな損失につながるケースがあります。

よくあるリスク例

操業停止命令による納期遅延・取引解消

近隣住民からの損害賠償請求

SNS・メディアでの炎上・企業イメージの失墜

一度信頼を失うと、その回復には長い時間とコストが必要です。
環境対応はコストではなく、企業を守るための保険と考えるべきでしょう。


🧩 小まとめ

排ガス処理の目的は、
「環境のため」だけでなく「事業の継続」と「信用の維持」。
その根底には、法令遵守と地域との共存があります。

借りる前に排ガスの規制と設備の有無を確認すること。
それが安心して操業できる工場選びの第一歩です。

.排ガス処理の代表的な方法

排ガス処理の基本考え方

排ガスの処理方式は、どんなガスが出るかによって選ぶ方法が変わります。
たとえば、化学系や塗装系では有機溶剤のガスが多く、
金属加工系ではばい煙や粉じんが中心になります。

処理方法は大きく分けて次の3つ。

燃焼方式

吸着方式

洗浄方式

それぞれの特徴と、導入時のポイントを順に見ていきましょう。


燃焼方式汚染物質を「燃やして」分解する

最も一般的な処理法が、この燃焼方式です。
排ガスを高温で燃焼させることで、
有害成分(有機溶剤・臭気など)を二酸化炭素と水に分解します。

代表的なタイプは3種類あります。

方式名

概要

特徴

直接燃焼式

バーナーの炎で直接燃やす

構造がシンプル。高濃度ガス向き。

触媒燃焼式

触媒の化学反応を利用して低温燃焼

省エネで、塗装・印刷業に多い。

蓄熱燃焼式(RTO

熱交換体で高温を維持しながら燃焼

連続運転に向く。大規模工場で採用。

💬 現場メモ:
塗装工場・印刷工場・樹脂製造などでは、
この「燃焼式(特に触媒・蓄熱型)」が主流です。
初期コストは高め(数百万円〜)ですが、
メンテナンスを含めると長期的には安定運用が可能です。

注意点

  • 定期的な触媒交換やバーナーの点検が必要。
  • 燃焼排熱の再利用で省エネ設計にする企業も増加中。

吸着方式活性炭などで「吸い取る」

吸着方式は、ガス中の有害成分をフィルターで吸着除去する方法です。
代表的な吸着材は「活性炭」や「ゼオライト」
VOC
(揮発性有機化合物)対策として、最も多くの工場で採用されています。

・ガスを吸着層に通し、汚染成分を捕まえる

・フィルターを一定期間ごとに交換・再生する

・装置が比較的小型で、設置コストが低い

💬 導入しやすさが魅力
コンパクトで扱いやすく、レンタル対応しているメーカーもあります。
一方で、定期メンテナンスを怠ると吸着効率が急激に落ちるため、
1〜数か月ごとの点検が欠かせません。

メリット

デメリット

装置がコンパクト・低コスト

フィルター交換コストが継続的に発生

可燃性ガスの爆発リスクが低い

高濃度ガスには不向き

多種類のガスを処理可能

湿気や温度で性能が変化

ポイント
長期的には「燃焼+吸着」の併用が理想。
まず吸着で濃度を下げ、残りを燃焼で処理する工場も多いです。


■③ 洗浄方式水や薬剤で「中和・吸収」

洗浄方式は、排ガスを水や薬液に通して汚染成分を中和・除去する方法です。
化学系・金属系の工場で広く使われています。

タイプ

処理方法

対応ガス例

水洗式

水に溶けやすいガスを吸収

アンモニア・塩化水素など

アルカリ洗浄

酸性ガスをアルカリ液で中和

硫黄酸化物(SOx)など

酸洗浄

アルカリ性ガスを酸で中和

アンモニア・アミンなど

装置構造は「塔状」で、上から液体を流し、下からガスを吹き上げる形が一般的。
設置スペースはやや必要ですが、長期間安定して稼働できるのが特徴です。

💡 現場の注意点

・洗浄液の交換・廃液処理も法令遵守が必要。

・設備内のスケール(析出物)対策も重要。


その他の補助的な処理方法

電気集じん方式: 静電気の力で粉じんを除去(大型ボイラーなどで使用)

バイオ方式: 微生物の力で臭気物質を分解(食品工場などで採用)

多段処理: 吸着+洗浄など複数方式を組み合わせて効率化

こうした処理方式は年々進化しており、
「エネルギー効率を高めながら環境負荷を減らす」技術が次々に開発されています。


🧩 小まとめ

排ガス処理には、燃焼・吸着・洗浄3大方式があります。
それぞれに得意分野があり、
業種・ガス成分・濃度・稼働時間によって最適解が異なります。

設備を「ただ付ける」ではなく、
どんなガスをどのくらい出すのかを把握したうえで選定すること。

次章では、これらを踏まえて工場を借りるときに押さえておきたい
**
「排ガス対応物件のチェックポイント」**を解説します。

.物件選びで失敗しないためのチェックポイント

① 排ガス処理設備が「設置できるか」を確認する

賃貸工場では、新たに排ガス処理設備を設置できるかどうかが最初の分かれ道になります。
排気ダクトや煙突を増設する場合、

・建物構造上の制約(天井高・梁・屋上形状)

・消防・建築基準法上の制限

・オーナーの承諾
が必要です。

チェックポイント

屋上や外壁に排気ダクトを通すスペースがあるか

隣地境界からの距離が確保できるか(煙・におい対策)

・既存の排気ファンやフィルターはどのような仕様か

こうした要素を確認せずに契約すると、
「排気ルートが取れない」「設備が付けられない」といった理由で
稼働前から改修費が発生するケースもあります。


② 周辺環境との距離と風向きをチェック

排ガス対策で最も重要なのが、近隣環境との関係性です。

たとえば、

・住宅地・学校・病院などが近い

・道路を挟んだ向かいにマンションがある
こうした場所では、においや煙への苦情が入りやすくなります。

特に気をつけたいのが「風向き」。
風下に住宅がある場合、思った以上に臭気が広がることがあります。

💬 現場のコツ

・地域の風向データを確認(気象庁サイトなどで調査可)

・周辺の工場や倉庫の排気位置も観察しておく

においがこもる地形(谷・住宅密集地)では慎重に判断

立地選び=トラブル防止の第一歩
周辺との距離と風向きを押さえるだけで、
開業後の苦情リスクを大幅に減らせます。


③ 行政・自治体の条例や届出を確認

排ガスに関する規制は、国の法律だけでなく自治体ごとの条例でも定められています。
たとえば大阪府や兵庫県では、

・悪臭防止条例

・有害物質取扱いの届出制度

・排ガス処理設備の設置届
などが追加で必要な場合があります。

確認すべき窓口

・市役所・環境保全部門(大気環境課など)

・保健所(におい・粉じん関係)

・消防署(可燃性ガス使用時)

届出の有無や排出基準値を把握しておくと、
後からの修正や指導を防ぐことができます。
契約前に不動産会社や設備業者を交えて、
「この物件は法的に使えるのか」を一度確認しておくと安心です。


④ 既存設備とメンテナンス履歴を確認

工場物件の中には、以前の入居者が使っていた排気設備が残っている場合があります。
一見そのまま使えそうでも、
長年の使用で汚れや腐食が進んでいることも多く、
放置すると性能低下や臭気漏れの原因
になります。

チェックすべき項目

・ダクト・ファン・フィルターの清掃記録

・触媒や吸着材の交換時期

・排ガス測定結果(あれば確認)

メンテナンス履歴がない場合は、初回点検と性能確認を行いましょう。
また、入居前に「残置物としての扱い」なのか「設備として引き継ぐ」のかを
契約書上で明確にしておくことも重要です。


⑤ 専門業者・不動産会社への相談を惜しまない

排ガス対策は、建築・設備・法令が絡む複雑な分野です。
自社だけで判断せず、以下のような専門家の協力を得ることで、
契約トラブルを防げます。

専門家

相談できる内容

設備メーカー・施工業者

排ガス処理装置の設計・コスト・設置可否

行政担当窓口

届出・規制・地域条例の内容

不動産会社(トチタテビルディング等)

物件の構造・オーナー承諾・地域事情

💬 ポイント:
排ガス設備の確認は、契約前の**「用途相談」段階で行うのがベスト**
稼働後に指導を受けるより、最初に確認しておく方が圧倒的にコストが少なく済みます。


🧩 小まとめ

排ガス対策の最終ポイントは、**「設備」「環境」「法令」**3つをセットで考えること。

  • 設備:設置可能か・既存の状態はどうか
  • 環境:周辺との距離・風向き・住宅地との関係
  • 法令:条例や届出の要否・基準値

工場選びの鉄則
「排ガスは出てから考える」では遅い。
契約前に出せるのか・どう処理するのかを確認しておくこと。

🔚 全体まとめ

工場から出る排ガスには、ばい煙・VOC・粉じんなど多くの種類があり、
法律で厳しく規制されています。
排ガス処理を怠ると、健康被害・近隣トラブル・操業停止など、
事業継続に大きな影響を及ぼします。

排ガス対策の基本は、
「どんなガスが出るか」「どう処理するか」「それを設置できるか」
を順に確認すること。

安心して長く操業できる工場を選ぶためにも、
物件選びの段階で排ガス対応をしっかり確認しておきましょう。


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